健康は大切です。これはおそらく誰もが異論のないことだと思います。しかし、診療をしていると、ときどき不思議に思うことがあります。私たちは何のために健康になろうとしているのでしょうか。 血圧を下げる。血糖値を下げる。体重を減らす。運動をする。どれも大切ですし、私自身も患者さんにそのようなお話をします。しかし、それらは本当に目的なのでしょうか。 例えば、100歳まで生きることができたとしても、旅行に行きたいとも思わない、会いたい人もいない、楽しみにしていることもない。そのような状態で長生きすることにどれほどの意味があるのでしょうか。少し極端な話かもしれませんが、私は健康について考えるとき、いつもこのことが頭に浮かびます。 私は健康とは「やりたいことができる状態」だと思っています。そしてさらに大切なのは、それが将来も続くと期待できる状態であることです。 人によってやりたいことは違います。仕事を続けることかもしれませんし、旅行かもしれません。家庭菜園かもしれませんし、孫と遊ぶことかもしれません。私自身であれば走ることです。今フルマラソンを走れることも嬉しいのですが、それ以上に10年後も20年後も走れる可能性を残しておきたいと思っています。 そう考えると、高血圧の治療も糖尿病の治療も見え方が変わってきます。血圧を下げること自体が目的ではありません。脳梗塞や心筋梗塞を防ぎ、将来も自分の足で旅行に行けるようにするためです。血糖値を下げることも同じです。数字を改善するためではなく、将来も目が見え、自分で生活できる可能性を高めるためです。 最近はWell-beingという言葉を耳にする機会が増えました。幸福感や生きがいも健康の一部だという考え方です。私はこの考え方に共感していますが、同時に、まだ医学では十分に説明できていない部分もあるように感じています。むしろ、人が元気でいるためには、検査値よりも「次に楽しみにしていること」の方が大切なのではないかと思うことさえあります。 当院では、風邪や腹痛などの診療だけではなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の治療、健康診断、予防接種、肥満外来、睡眠時無呼吸症候群の診療などを行っています。これらは一見すると別々の診療のようですが、私の中ではすべて「患者さんが将来もやりたいことを続けられるようにするための医療」という点でつな...