テレビドラマ『19番目のカルテ』では、総合診療医が患者さんの話や表情、検査の結果などあらゆる情報から病気の本質を突き止めていきます。
あのドラマを見ていて、「診断って、こんなに複雑なんだ」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際の医療現場でも、診断とは「その時点で一番可能性の高い病気を推定すること」です。
症状が出始めたばかりの時期には、どの病気なのか判断が難しいこともあり、すべての検査で異常が出ないことも少なくありません。
「病気ではない」と言い切るのではなく、「今の段階では決め手がないけれど、これとこれの可能性がある」という視点で診察しています。
たとえば、咳が長引いているとき、最初は「風邪でしょう」と判断されても、経過を見ていく中で「百日咳」や「感冒後咳嗽(風邪の後に気道の過敏性が残って咳が続く状態)」と診断が変わることがあります。
百日咳は今、成人にも増えており、風邪のように見えて実は感染症で、抗菌薬が必要になることもあります。
診断の変更は“間違い”ではなく、“新しい情報に基づいた修正”です。
また、まれではあるけれど見逃してはいけない重大な病気、たとえば肺炎や喘息、心疾患などの可能性が少しでもある場合には、念のために血液検査やレントゲン、心電図などを提案することもあります。
可能性が低いからこそ「見逃してはいけない」と考えているのです。
『19番目のカルテ』の主人公のように、医師は診察を“その場限りのもの”ではなく、“次につながる手がかり”と捉えています。
そのため、症状が続いたり変化した場合は、再度診てもらうことをためらわずにいてください。
診断とは一度で終わるものではなく、経過をたどって見えてくる「ストーリー」でもあるのです。
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