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チートデイは本当に必要? 〜重度の肥満と“食べたい気持ち”との上手なつき合い方〜

「ダイエット中だけど、今日は好きなものを食べていい日にしよう!」

そんな“チートデイ(cheat day)”という言葉、聞いたことはありますか?

先日、患者さんから、チートデイを作ってもいいですか?というご質問がありました。

我慢ばかりのダイエットを続けるのはつらいもの。チートデイは、時々食事制限をゆるめて、心と代謝をリセットしようという考えに基づいた方法です。

でも、BMI35〜40以上の重度肥満がある方にとって、チートデイは慎重に扱う必要があります。体のしくみや心のクセを理解しながら、うまく対処していくことが大切です。



■ 体は「飢餓」にとても敏感

ダイエットを続けていると、体は「これ以上体重が減らないように」と守ろうとします。その時に関わるのがレプチンというホルモンです。
レプチンは脂肪から分泌され、「おなかがいっぱいですよ」と脳に伝える信号ですが、**重度肥満の人ではレプチンが効きにくくなっている(レプチン抵抗性)**ため、満腹感を感じにくくなっています。

そんなときにチートデイで高カロリー食をとっても、脳が満足せず、食べすぎを引き起こしやすくなります。


■ チートデイが裏目に出ることも

重度肥満の方は、インスリンや代謝に問題を抱えていることが多く、チートデイの高糖質・高脂質な食事が血糖や脂肪の急上昇を招くことがあります。

  • 血糖スパイク → 疲れ・空腹感・気分の落ち込み

  • インスリン急増 → 脂肪の蓄積

  • 「また食べたい」気持ちが強くなり、リバウンドのきっかけになる

そのため、「息抜き」のつもりが、かえってダイエット継続を妨げてしまうこともあるのです。


■ 食べたくなったとき、どうすれば?

食欲は、本当の「空腹」ではなく、気分や習慣、環境に影響されて起こることが多いものです。そんなときには、次のような方法で気持ちを落ち着けることができます。

🌿 食欲をそらすためのアイデア

  • 温かいお茶をゆっくり飲む(胃が落ち着きます)

  • 歯みがきをする(口の中がスッキリすると、食欲が収まりやすい)

  • 5分だけ散歩する・軽い運動をする(食欲ホルモンを抑える効果も)

  • 手を動かす(塗り絵・編み物・スマホゲームでもOK)

  • 「今の気持ち」をメモに書いてみる(ストレス・退屈・寂しさが見えることも)

「今食べなければいけない理由がある?」と自分に問いかけてみるだけでも、衝動は少し落ち着きます。


■ チートデイより“リフィード”という方法も

どうしても我慢がつらいときには、「再給食(リフィード)」という方法があります。これは、炭水化物中心に少しカロリーを増やすけれど、脂質は抑えるという工夫で、代謝を落とさず気持ちもリフレッシュできる方法です。

例:
🍚 白ごはんをしっかり食べる
🍠 焼き芋や干し芋を楽しむ
🥣 甘くないおしるこや雑炊など


■ まとめ:あなたの努力は、必ず力になっている

チートデイは「息抜き」として魅力的に見えるかもしれません。
でも、重度の肥満と向き合っている方には、代謝のしくみや食欲のクセをふまえた対処が大切です。

「食べたい」気持ちと上手につき合うことも、立派な自己管理のひとつ。
無理に我慢するのではなく、自分を知って、自分をコントロールする力を身につけていくことが、ダイエット成功への大きな一歩になります。

困ったときは、私たち医療スタッフにも遠慮なくご相談くださいね。


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